一章 紅い雨

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  怒ったのは武士の方だ。 「答えろ!貴様は……うわぁぁぁ!」 何をしたのか、雨月がぱぱっと動いただけで武士は吹っ飛び、背中から落ちて苦悶の声を上げている。 雨月の手には例の武士の刀があった。 自身も帯刀しているというのに刀を奪ったのだ。 「曲者めっ」 そんな大それたことをして、許されるはずもなく、周りを他の武士たちに囲まれる。 町民たちは、悲鳴をあげながら逃げるもの、野次馬のように見物するものに別れた。 「馬鹿雨月」 薫が影で罵倒したのは言うまでもない。  
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