一章 紅い雨

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  十人ほどに囲まれた雨月は奪った刀をだらんと下げ、何の構えもせず佇んでいる。 立ったまま眠ったのか、と思うほど動かない雨月に痺れを切らした一人の武士が気合いの雄叫びと共に斬りかかる。 だが、雨月は動かない。 武士の刀が振り下ろされた時、スッと雨月が動く。 正面から来た相手の刀を半身になりながら、踏み込んでかわし、すれ違い様に刀の柄を首に叩き込んだ。 その武士は糸の切れた操り人形のようにがくっと倒れ込んだ。 そのまま雨月は歩を進め、違う武士の間合いに入る。 さして早い動きには見えなかった。 ちゃんと目で追える速度だったし、姿は捕らえていた。 つもりだった。 だが、雨月は実際誰よりも早く動き、誰も動けぬ間に二人目を昏倒させた。  
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