170人が本棚に入れています
本棚に追加
1週間後、夏は手紙に書いてあった通り、兄の同級生である山本航平(やまもと こうへい)に留守を頼み、出発することにした。
家の前で鍵をかけ、夏は航平の手に鍵を置いた。
「すみません…お忙しい所留守を頼んでしまって…」
「あー いいよいいよ。涼と夏ちゃんの頼みだからねー。家は任せといて!」
航平はへらへら笑って鍵を揺らしながらウインクする。
「ありがとうございます!あ・もうバス来ちゃうんで行きますね。家お願いしまーす!」
夏はそう言って重たそうなキャリーを抱えて急いで駆けていく。
「夏ちゃん…ごめんな…。俺と涼を許してくれ…」
航平は目を伏せると、既に表札も外された名もない家から、静かに立ち去った。
最初のコメントを投稿しよう!