兄の思惑

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この男性にとってさっきの人は悪い人ではないらしい。 「そうなんですか…。それより仕事仲間ってことはあなたも歌手?」 「いえ、僕は彼の所属しているとこの同僚なだけです。たいしたことないですよ。」 男性はまたははっと笑いながら言った。 その後も初対面とは思えない程、夏と男性の会話はどんどん弾み、もう到着だというのにずっと話し続けていた。 「へー、でも音楽関係の仕事って凄いですね!私も音楽好きなんです。」 「そうですか!何か楽器でも?」 「いえ…楽器はあまり得意じゃなくて…。歌が好きなんです…。」 夏は少し顔を赤くして言った。 「歌ですか…いいですね!」 男性はにこっと 笑いながら言った。 「はい!ありがとうございます!あ・そう言えば今更ですけど自己紹介してなかったですね…私 加賀美夏って言います。アメリカにはお仕事で行かれるんですか?」 「はい、彼と2人で…僕は谷本侑(たにもと ゆう)と言います。また機会があればお会いしましょう。ではまた。」 そう言うと侑は軽く会釈をし、華麗に立ち去って行った。 『なんて紳士的な人なんだろう…あんな素敵な人なかなかいないよなぁ…』 夏は侑の後ろ姿を少しにやけながら見送るのであった。
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