Prologue

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また、『深紅』の翼を持つものだけに与えられる異名…、『紅』 『紅』の名を持つ者の魔法の付与属性は、全属性。 唯、主だって使用するのが希望を象徴をする光と混沌を象徴する闇。 また、与えられる魔力も膨大で――――……、 トランシルバニア地方で生まれた、深紅の翼をもつ小さき吸血鬼も例外ではなかった。 小さな身体では、抑えきれないほどの魔力…。それが原因で、平和だった村に小さき吸血鬼を狙った魔物たちが姿を現し、村を襲うようになっていった。 そして、その魔物たち全員を小さき吸血鬼だけが相手をしていたのだ。 どんなに身体がボロボロになろうとも、たった一人で。 そしてその光景を他の吸血鬼も見ていたが、誰一人として手伝ってやる者はいなかった。 …否、手伝いたいけど、手伝えないものが一人だけいたのだ。 それは、その小さき吸血鬼の親友…。 “親友が育った村のみんなを守るため” 小さき吸血鬼はそれだけを考えて動いていた。 小さき吸血鬼は優しかったのだ。否、優しすぎたのだ…。 散々罵倒されたにも関わらずに―……、 村のみんなを憎んでいるなら、魔物を放置していれば良い。 だが、そんな事はしなかった。いや…出来なかったのだろう。 たとえ、憎んでいたとしても、彼にはそんな事が出来なかった。 親友の悲しむ顔は見たくなかったから…。 だが、吸血鬼の年齢で10歳を迎えたあの日…、親友に別れの言葉も告げられずに、森に放置された。
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