小さき吸血鬼

2/3
前へ
/90ページ
次へ
ギルドからの任務から自分が住まう街―リーズ街―に帰ってきた少年に待ち受けていたもの。 それは、親友だった幼馴染の姿だった。 幼馴染は、棄てた故郷の村長の息子。今一番会いたくない人。 幼馴染を避けるようにして裏口からギルド内に入る。それから、ギルドマスターに任務完了の報告をしに行く。 ギルドマスターがいる部屋の前でようやく目深にかぶっていたフードを取る。 部屋をノックし「失礼します」と扉を開き、ギルドマスターに会釈をした後に言う。 「おお、ブラッドか」 「任務終了の報告にまいりました」 少年の名は、ブラッド・ベルリオーズ・アイリス。 またの名を『創帝』、『紅月の宵闇』と呼ばれている。 二つ名を知る者は数少ない。 「流石だな、ブラッド。どうだ?魔法の扱いには慣れたか?」 「ええ、大分慣れました。それでは、俺は部屋に戻ります」 ブラッドはギルドマスターの部屋から詠唱破棄で「転移」と呟くと自分の部屋に戻った。 因みにブラッドの部屋は、ギルド内にある開かずの部屋と呼ばれる位置にある。 なので、滅多に人が通らない。だから、己自身も、自室には転移でしか行かない。一度、行った場所にならどんな場所でも転移で行ける。たとえ、周りに結界が張られていたとしても、ブラッドの前では紙切れ同然だった。 自室に戻ると直ぐにベッドに倒れこむ。 ブラッドは追放される前に名付けられた「アリス・クラナード」という名を追放された時点で棄てた。 追放されたのを匿ってくれたのが、ギルドマスターのイヅミだった。そのイヅミについていたのが、リリン・スザク・フランク。 今の名を名付けてくれたのは、リリン。 リリンと出会って、数ヶ月後には、リリンと結婚して幸せに暮らしていた。………が、リリンを俺の不注意で死なしてしまった。未だに後悔だけが残っている。 イヅミは俺の事情を全てわかった上で俺に魔法の扱い方や、武道を叩き込んでくれた。それがあるからこそ、俺は今「創帝」でいられる。
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!

115人が本棚に入れています
本棚に追加