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「それにしても、幼馴染の姿を見るとはな」
幼馴染、アリエル・クリス・シュバイツァー。あいつは、俺が追放されたと知って俺を探し、連れ戻しに来たのだろうか。
いや、俺は向こうに戻る気はない。故郷は捨てた。追放された瞬間から。
とうの昔に捨てた故郷だった場所。
今の故郷は此処だ。この街だ。
アリエルは、俺が追放者だろうが気にはしないと思うが俺は、あいつとの約束さえ守れずに故郷だった場所を捨てた奴だから、今更…。
「だが、俺の周りをうろちょろされても迷惑な話だな。やはり、一度会って話してみるべきか?」
部屋の中でポツリと呟いた。
夕飯を食べる気力すらなく、そのまま寝入っていった。
夢を見た。
これが何故夢だと分かるかはそれは、これは故郷だった場所にあるアリエルと一緒に作った秘密基地だったからだ。
「なぁ、俺達約束しないか?」
「…何を」
「俺たちが大人になった時、また此処で会うということを」
「………っ!!」
この時の俺は、まだ6歳。だが、自分が皆と違う事は知っていた。10歳になったらこの村から出て行かなければいけない、ということも。…とはいえ、それをアリエルに伝えるのは無理だった。
親友だったから。アリエルの想いがあまりにも純粋すぎて俺自身が泣きたくなったから。
「その約束は、出来ない、と思う。でも、出来るだけ守る」
「…?なんで、出来ないんだ?」
「俺は…っ、なんでもない。出来るだけ守る、」
「…?あ、ああ。約束な?」
アリエルの疑問はもっともで、俺も正直に自分の運命を言いそうになったものの、言わなかった。
いや、言えなかった。アリエルの悲しむ顔は見たくなかったから。
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