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ある日。
私と夫と娘は買い物帰りで、静かな夜の街の道路を歩いていた。
片方のガードレールの向こう側に田んぼが広がるこの路は街灯も少なく、ほぼ真っ暗だ。
かといって人が居ない訳ではない。
シャッターの下りた店の前にたむろしている若者達。
千鳥足で横を通り過ぎて行く泥酔した中年サラリーマン。
向こうの歩道を犬を連れてのんびり散歩している人。
などなど。
田んぼがある癖に近くにそれなりの繁華街がある為、暗い夜道にしては多いくらいの人が居るが、やはり昼間の人通りには敵わない。
私は歳のせいかよく浮腫むようになった足と重い買い物袋で痛む手を気にしつつ無言で歩いて行く。
やっぱり夜間の買い物は良くない。
夜風を浴びながら歩いていると、一台の大きなトラックが轟音を響かせながら横を通る。
集中しているとトラックの轟音でも近くに来るまで気づかないんだなぁ。
と、考え、ふとあることに気付く。
さっきまで隣に居た夫と娘が居ない。
店の前の若者達も。
散歩していた犬と人も。
千鳥足のおじさんも。
みんな。
居ない。
何処へ行ったんだろう。
申し訳程度の外灯も、暖かい家の灯りも消え失せ、私を照らすのは星と月灯りのみ。
呆然と立ち尽くす私を、
まだ湿り気の残る風が通り過ぎて行った。
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