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最強とは、何を指して言う。もちろん、最も強い存在だ。ならば、最も強い存在とはなにか。その答えは【吸血鬼】だ。彼らに関する伝説のなかで真実はそう多くない。彼らの苦手とする太陽の光も、一部の吸血鬼には効果がない。また、にんにくや十字架も意味がない。不死身でもない。ただ、再生能力が高く、ほぼ永遠の時を生きることができるだけだ。
彼らは夜に人を襲い、血を吸うが、それも一部のものけで、大半はその衝動―吸血衝動―を抑えることができる。
血を吸う一部のものから人間を守るものがいる。それは、【狩人】と呼ばれている。
†
「はぁ、はぁ」
どうして僕は追われているんだ。僕が一体何をしたっていうんだ。それよりも、奴は一体なんなんだ。そんなことを考えていると僕は、石に躓き転んだ。
「もう、追いかけっこは終わりか?ん、どうしたんだよ、急に大人しくなりやがって。たまんねぇだろうが。何か言ってみろ……」
怖い。怖くて声が出ない。それどころか、足が動かない。動けよ、僕の体だろうが。何で思った通りに動かないんだよ。死ぬのか。僕はここで死ぬのか。そんなのは嫌だよ。まだ、生きていたいんだよ。
すると、不意に声がした。
『お前は、まだ生きたいんだな』
誰、誰なんだ。いや、この際誰かなんてどうでもいい。助かるのなら。
『そうか、お前はまだしにたくはないんだな。分かった。ならば、お前に力を与えよう。目の前の奴を倒す力を』
奴がもう目の前に来ている。僕は、死を覚悟して固く目を閉じた。
「……よ。まぁ、いい。手前ぇの血、ありがたくもらうとす……」
すると、辺り一面に閃光が走った。眩しい。何だ、今の光は。
そして、奴の言葉が止まった。何故だ、何故止まったんだ。それ以前に僕はいきているのか。
『おいおい、何を考えてんだよお前は。ついさっき、自分で生きたいって願ったんだろうが。ったく』
僕の思ったことに対して、またさっきの声がする。
生きているのか。僕は、生きているのか。
『……まぁ、いい。これで、お前は俺の契約者だ。ところで、お前、名はなんというんだ』
「えっ、ぼ、僕は、日向太陽。ところで、君はなんて名前。それに、どこから話しかけているの」
僕のこの問いに、その声は
『麒麟』
と、一言短く答えた。
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