異常な日常

2/8
前へ
/8ページ
次へ
最強とは、何を指して言う。もちろん、最も強い存在だ。ならば、最も強い存在とはなにか。その答えは【吸血鬼】だ。彼らに関する伝説のなかで真実はそう多くない。彼らの苦手とする太陽の光も、一部の吸血鬼には効果がない。また、にんにくや十字架も意味がない。不死身でもない。ただ、再生能力が高く、ほぼ永遠の時を生きることができるだけだ。 彼らは夜に人を襲い、血を吸うが、それも一部のものけで、大半はその衝動―吸血衝動―を抑えることができる。 血を吸う一部のものから人間を守るものがいる。それは、【狩人】と呼ばれている。    † 「はぁ、はぁ」 どうして僕は追われているんだ。僕が一体何をしたっていうんだ。それよりも、奴は一体なんなんだ。そんなことを考えていると僕は、石に躓き転んだ。 「もう、追いかけっこは終わりか?ん、どうしたんだよ、急に大人しくなりやがって。たまんねぇだろうが。何か言ってみろ……」 怖い。怖くて声が出ない。それどころか、足が動かない。動けよ、僕の体だろうが。何で思った通りに動かないんだよ。死ぬのか。僕はここで死ぬのか。そんなのは嫌だよ。まだ、生きていたいんだよ。 すると、不意に声がした。 『お前は、まだ生きたいんだな』 誰、誰なんだ。いや、この際誰かなんてどうでもいい。助かるのなら。 『そうか、お前はまだしにたくはないんだな。分かった。ならば、お前に力を与えよう。目の前の奴を倒す力を』 奴がもう目の前に来ている。僕は、死を覚悟して固く目を閉じた。 「……よ。まぁ、いい。手前ぇの血、ありがたくもらうとす……」 すると、辺り一面に閃光が走った。眩しい。何だ、今の光は。 そして、奴の言葉が止まった。何故だ、何故止まったんだ。それ以前に僕はいきているのか。 『おいおい、何を考えてんだよお前は。ついさっき、自分で生きたいって願ったんだろうが。ったく』 僕の思ったことに対して、またさっきの声がする。 生きているのか。僕は、生きているのか。 『……まぁ、いい。これで、お前は俺の契約者だ。ところで、お前、名はなんというんだ』 「えっ、ぼ、僕は、日向太陽。ところで、君はなんて名前。それに、どこから話しかけているの」 僕のこの問いに、その声は 『麒麟』 と、一言短く答えた。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加