見知らぬ来訪者

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瞬間。 女はいつのまにか両の手にナイフを取り出し、右に投擲してみせた。前にいる私には当然、かすりもしない。 私が疑問の表情を浮かべていると、今度は左に。後ろに。前に。縦横無尽にナイフを投げ始めた。 その行為に半ば呆気にとられていると、直後、左から飛来した物体に頬を裂かれた。 「……ッ!」 ようやく気付いた。壁の反射を利用した多角攻撃。狙いは正確無比で、寸分の狂いもなく投擲される。規則性など無く、予測不可能。間隔も違えば、速度まで違う。 驚いた。人の身でこの領域に到達するには、相応の研鑽を積まなければならない。 まだ年端もいかぬ少女が、よくやるものだ。 小夜嵐のようなナイフの弾幕が、幾重にも重なりあって襲い来る。寸前で回避しても、剣圧だけで肉が裂ける。おまけに素材は銀ときた。どうりで傷の再生も遅いわけだ。 そろそろ避けるのも辛くなってきた。出血量も大分増えてきている。 銀とはいえ、所詮はナイフだ。威力では私の炎剣に及ばない。 私はもう一度炎剣を創り出そうと―――――
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