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「始めまして、妹様。メイド長の十六夜咲夜です。以後お見知りおきを」
「―――――」
そう言って流麗な動作で頭を下げる。私はというと、思わず言葉を失った。
流れるような銀髪の美しい女だった。
落ち着いた物腰と、隙のない身のこなし。一目で只者ではないとわかった。
この私を前に恐れもしないこの態度。さっきも思ったが私の力を知らないのだろうか。
そしてこの美酒にも勝る極上の匂い。
珍しい。人間だ。
「はじめまして。フランドール・スカーレットよ」
その言葉で、その人間は恭しく垂れていた頭をやっと上げた。
「妹様のお世話をさせていただくことになりました。咲夜とお呼び下さい」
アイツが私に人間を寄こしたということは餌と受け取っていいのか?
だがこいつはあろうことか私の世話をすると言った。
それにこの人間の隙の無さ。簡単に食わせてはくれなさそうだ。
私は少し、この人間に興味が湧いた。
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