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「特技は?」
「手品でございます」
人間――――女は即答した。
その顔からは真偽は読み取れない。駆け引きに慣れている風だ。
「見せてくれる?」
「お望みとあらば」
そう言うと女は何もなかったはずの手から一瞬でトランプの束を取り出して見せた。
「へえ、魔法?」
「ふふ、手品ですわ」
思わず尋ねると何がおかしかったのか女は微笑した。
不思議と不快な気にはならなかった。
「大したものね。もしかして本業?」
「いえ、手品は所詮趣味の一環ですわ」
「もったいないわね。貴方ならトップを目指せると思うわ」
「もったいなきお言葉」
お世辞ではない。
吸血鬼であるこの私の動体視力でも見切れなかったほどだ、相当な腕前だろう。
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