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「では、このカードが地面に着いたら、始まりの合図とさせていただきます」
「いいわ」
私が答えると、まるでそれが合図だったかのようにカードが舞った。
普通に落とすだけでは芸が無いと思ったのだろう、女は部屋の天井目掛けてカードを放ったのだ。
否、それは投擲に近かった。空を切り裂きながら一直線に落下してくるそれは、さながら刃物のようだった。
いよいよだ。着地まであと3秒ほど。
2…1…
床を蹴った。具体的なルールの説明は受けていない。ならば着地と同時に攻撃を加えても、問題あるまい。
目標まで5メートル。あと一歩踏み出せば、それで決着がつく。
両足に魔力をこめ―――――
「ストップ、ですわ」
「!?」
何を思ったか、女が制止の声を上げた。
思わず踏みとどまる。
「……どういうこと?」
「まだ、始まっていませんわ」
「何を―――――、!?」
私は反射的に地面を見下ろした。
思わず目を剥く。そこには着地寸前で、空間に縫い付けられたようにカードが『停まって』いた。
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