3.急接近

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  公園に着くと、まだ彼の姿は見当たらなかった。 バッグから携帯電話を取り出すが着信履歴はない。 時計を見ると9時45分。 15分も早く来てしまった……。 なんだか浮かれている自分が恥ずかしくなり、いつもの丸太のテーブル席に腰掛けることにした。 さわさわと、暖かい風が髪をなでる。 (桜、散ってきたなぁ) どのくらい景色を見ていただろう。 「坂月さん」 ガードレールを挟んだ車道から、自分を呼ぶ声がした。 振り向くと、白のスポーツセダンがハザードランプをつけて止まっている。 運転席には彼の姿。 「乗って」 内側から助手席のドアが開いたので、小さく頷き、助手席に乗り込んだ。 こちらがドアを閉めたのを確認してから、彼がゆっくりハンドルを切る。 車内という密室に二人きり。 シートの匂い。 カーオーディオから流れる静かな音楽。 薄手のジャケットに細身のジーンズという、先日とは違うカジュアルな服装の彼。 緊張が一気に押し寄せた。 彼のひとつひとつの動作が、なんだかくすぐったい。  
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