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「こんなこと考えてんの、俺だけかと思った。よく友だちに変なやつって言われたし」
「えー」
「坂月さんも変わってるって言われない?」
「私も未歩でいいですよ。
変わってるっていうか……映画の世界観に浸りたいって話をしたら、必ずといっていいほど『頭の中もお花が咲いてそうだもんねー』って言われます」
「はは、なんか納得」
「え、納得っ?」
「ごめん嘘。…ははっ」
「……ふふっ」
彼がまた笑うので、つられて笑ってしまう。
こんな調子で、二人の会話は途切れることがなかった。
未歩はふと、あることに気がついた。
(この人、パパに似てるかも)
パパとはもちろん父の事だ。
車の好みもそうだが、運転中のしぐさや会話の間の取り方など……
小さなところに共通点がある。
そういえば。
『もし恋をするなら、パパのように優しくて、包容力のある人がいいな』なんて。
いつからか思っていた。
……恋、か。
そんなことを考えていると、たまたま彼と目が合ってしまった。
刹那、ドキッ……と、高鳴る鼓動。
胸をわしづかみにされたような感覚に、戸惑いを隠せない。
不自然に目線をそらした自分に、彼は気づいただろうか。
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