16.衝突

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  顔を背けたままの正悟と浩太は、互いに何を言うでもなく、そこに座り込んでいた。 どれほどの間、部屋が静寂に包まれていたのだろう。 「……浩太」 その沈黙を破ったのは未歩だった。 「浩太、帰ろう」 歩み寄り、呆然とする浩太の腕を取る。 すると彼はその腕を力なく振りほどき、 「ごめん。一人にさせてくれ」 と言って部屋を出て行った。 浩太が閉めたドアの音だけが、やたら大きく部屋に響いた。 未歩は床に落ちているジッポライターを拾いあげ、正悟へと差し出した。 「……」 受け取らずにそれを眺める正悟の腕を取り、彼の手の平に乗せる。 「返すね」 ニッコリ笑いかけても、彼は目を合わせない。 当たり前だ。 自分の存在が、彼を苦しめているのだから。 「…………さようなら」 そう言って、自分も部屋を後にした。  
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