3.急接近

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  エンドロールも終わり、場内は明るさを取り戻していた。 彼が「出ようか」と立ち上がって、こちらを見下ろすと。 「……顔」 と言いながら、その顔を硬直させた。 うん、予想はできてた。 なぜなら自分の顔が涙でボロボロだったから。 「か、感動しちゃって」 「…………」 と言いながらも映画の世界観からまだ抜け出せず、ボロボロと涙が溢れでる。 「ご、ごめんなさい」 慌てて立ち上がろうとした時、 「……びっくりした」 と、静かに息を吐く音がおりてきた。 同時に彼の手がのびてきて。 その指がそっと頬の涙に触れた。 「……っ」 自分の頬とは違う彼の指の温度に、一気に現実へ引き戻される。 そして急激に恥ずかしさがこみ上げてきた。 「お、お手洗い行ってきます」 「……ごゆっくり」 彼はなんでもなさそうに、その指をおろした。 廊下の女子トイレで鏡の前に立ち、自分の顔を確認する。 アイメイクがボロボロで頬まで伝わった涙の跡は真っ黒だ。 これはひどい。 急いでクレンジングシートで拭き取り、メイクを直した。 どくどくと、全身の血が躍動するのを感じながら。  
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