3.急接近

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  ロビーに向かうと、彼は電話をしているようだった。 こちらに気づいて「ゴメン」のポーズをするので、笑顔で返した。 (友達、かな) 自分は耳が良いほうだ。 電話の向こうから気さくに話す男性の声が聞こえていた。 (あれ) その声に、なぜか違和感を知る。 けれどそれも一瞬で。 気のせいか、と頭のゴミ箱に捨てた。 「わかったわかった、また今度聞いてやるよ。いま出先だから、またな」 やがて彼が軽くあしらうように電話を切ろうとすると、 『デートかよ~~っ』 という叫びにも似た声が電話の向こうから響き、 ……プツッ。 と、彼は無言で電話を切った。 「……」 「……」 照れ臭いような、気まずいような、この空気。 どうしてくれよう。 「ゴメンな」 「い、いえ! お友達ですか? ゆっくり話してて良かったのに」 「いや、すっげーくだらない用件だから」 そう言いながら、彼は携帯電話をしまった。 (正悟さんの友達って、どんなタイプなんだろう) それから、どちらかが言い出すでもなく、二人は駐車場へと向かった。  
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