3.急接近

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  そして今度は自分の番になった。 食事はもう済んで、デザートを待ちながら。 「未歩ちゃんは、なんで音大に進もうと思ったの。やっぱプロ目指してるとか?」 と尋ねられたけれど。 自分は曖昧に首を傾げた。 「……気がついたら入学してたんです」 「親に無理やり行かされてるってこと?」 「いえいえ」 と、慌てて手を振る。 小さな頃からピアノを弾くのが当たり前だった。 素直に楽しかったし、両親が褒めてくれるのも悪い気がしなかった。 そんな単純な思考のままピアノの世界に没頭していて、 いつしかコンクールで入賞するのが当然になっていた。 「そのたびに、次はもっとレベルの高い曲を……もっと、もっとって。言われ続けるうちに、楽しいって気持ちより、義務感のほうが強くなってました」 「……」 『未歩ならできるよ』 『才能がある』 『逸材だ』 そう言われるたびに、完璧に弾かなくてはいけないような気になっていた。 周囲のプレッシャーに応えるために、周囲をがっかりさせないように。 失敗が怖くなっていた。 「でも、17才の時にプロデビューしないかっていうお誘いがあったんです」  
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