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当然、周囲は『プロになるだろう』と期待をした。
「でも、その時パパが言ってくれたんです」
『未歩はどうしたいんだい?』
『もう自分の望むように生きていいんだよ』
と。
「でも私自身、どうしたいのかわからなくて。だって、今まで自分で決めたことなんて何もなかったから」
その時に初めて、自分の人生について真剣に考えたのだ。
なにひとつ不自由なく暮らしてきた。
親の優しさに甘えて、自分のことだというのに、選択も責任も親任せだった。
「プロの話は断りました。でも将来的に自分がどうしたいかとか、もしピアノを捨てたらどうするのかとか、答えなんてでなくて」
結局、そのまま音楽大学に進むことになってしまったのだ。
「今でも時々不安になるんです。このままやるべき事が見つからなかったらどうしようって」
「……」
「でも、一人で決めるのって怖いですね。失敗したらどうしようって、足踏みばっかりしちゃって。はは。自立、したいです」
グラスについた水滴を指でなぞりながら、そう言い終えた。
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