3.急接近

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  重たい沈黙になりそうで、心に焦りが生じた時。 彼は穏やかな口調で語り始めた。 「そんなに、あせる必要はないんじゃないかな」 「……」 「若い時に、将来のことを明確に考えてるヤツなんて いないと思うよ」 誰もが自分が望む職業とはなんなのか、選んだ道はこれで正しいのか。 悩み、迷い、不安を抱いて選択の時が訪れるのを待つのだ。 と、彼は言う。 「たしかに失敗が怖くて、尻込みしてしまう気持ちはわかるけど」 「……はい」 「でも、道を間違ったっていつでも修正できるよ。回り道になってもいいから、自分が今できることを一生懸命やればいいんじゃないかな」 「……」 すとん、と。 彼の言葉が胸に落ちて。 じんわりと心の奥に染み込んでいく。 「……はい」 なんだか涙がでそうなくらい、救われた。 「ありがとうございます」 「ていうか、俺なんか給料目当てで今の会社入って、もう7年だからな。偉そうなこと言えねーや」 「ふふ」 泣きそうな自分に気づいたのか、彼は慌てて茶化した。 彼のおかげでまた和やかな時間が戻って、そのあとは楽しい会話が続いた。 なぜだろう、出会ったばかりの彼に、こんな重い話をしてしまったのは。 なぜだろう、彼の言葉のひとつひとつが自分の胸を熱くさせるのは。  
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