2.はじまり

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  「ごめんなさい」 「え、早っ……」 未歩が深々と頭を下げると、目の前の男は顔をひきつらせて言った。 「なんで? 他に好きなやつでもいるの?」 「違います。でも、誰とも付き合う気になれないっていうか……」 あなたの事よく知らないし。 と付け加えて未歩はもう一度頭をさげた。 「だから、ごめんなさい」 相手から再び言葉を発せられるその前に、踵を返し走り去る。 彼女は坂月 未歩(さかつき みほ)。 19歳、音楽大学の2年生だ。 父は大きな会社の社長であり、いくつかマンションも経営している。 小学校、中学校、高校とエスカレーター式の女子校に通った未歩は、いわゆるお嬢様である。 小さな頃から笑顔が絶えず、おっとりしているものの明るい性格だったため、様々なタイプの友人にも恵まれていた。 そんな彼女も、この夏には二十歳になる。  
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