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「あれ、でも歯科学部じゃなくて医学部なんですね?」
と、小さな疑問を口にすると。
「うん。俺、うちの歯科医院は継ぐ気ないんだ。従兄弟が継いでくれるって言うし」
「どうしてですか?」
「秘密! 口で言うより、まずは実現だもんな」
そう笑いながら、浩太はタバコを取り出した。
(あ、正悟さんのと同じ……かな?)
そう認識したとたん、日曜日のデートを思い出し、胸に熱いものがこみ上げる。
(また……逢いたい、な)
浩太や明美のテンポの良い会話が進んだが、気がつけばぼうっと彼のことばかり考えてしまうのだった。
「……だよな、未歩ちゃん」
「えっ?」
「またボーッとしてる。今週入ってから未歩おかしいよー?」
明美が心配そうに顔を覗き込んできた。
「そっ、そんなことないよ。えっ、と。なんかピアノ弾きたくなっちゃって。うん、帰ろうかな」
「あたし、ユウちゃんが来るから待ってるけど。 一人で帰れる?」
「大丈夫」
と答えて立ち上がると、
「じゃー俺も帰ろ」
あとに続くようにして浩太も立ち上がった。
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