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浩太の車が見えなくなるのを確認し、あの桜並木へ足を運ぶ。
いつものテーブルには先客がいたようだ。
買い物袋をテーブルに置いて、休憩をしている おばあさんだった。
(帰ろうかな)
と思ったが、もう少し歩いた所に同じ丸太のテーブルがあるので行ってみることにした。
(良かった、ここは空いてる)
誰もいない丸太のテーブルにつく。
桜の香りを感じながら、バッグからルーズリーフを取り出した。
もくもくと五線譜に音符を載せていく。
ふわっと暖かな風が吹き、桜の花びらが手に止まった。
――――『よく髪に止まるな』
花びらを取ってくれた、彼の声を思い出す。
(……逢いたい)
そう思った時、不思議と良いフレーズが浮かび上がった。
こうして五線譜のルーズリーフが3枚目にうつった時だった。
携帯電話が鳴って、胸がドキッと高鳴った。
『廣瀬 正悟』
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