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もちろんすぐに電話に応じる。
「はいっ」
「作曲、進んでるー?」
電話の向こうから、笑ったような声が響いた。
「えっ?」
「今日は違う席なんだな。会社の休憩所から見えてるよ」
「うそっ」
キョロキョロ周りを見渡した。
車道の向こう側にはビルが建ち並んでいる。
このどれかに、彼のいるビルがあるのだろうか。
「どのビルですか?」
「水色のー。7階」
目を凝らしてそれらしき建物を見ると、開いている窓を発見した。
彼らしき人が小さく見え、嬉しさ余って片手をぶんぶんと振った。
「いたー!」
「見えてるって」
と、彼も笑いながら手を振り返してくれた。
「今夜また連絡してもいい?」
「は、はい!」
「じゃ、またな」
と、電話は切れ、窓が閉まり人影が見えなくなった。
「……帰ろ」
気持ちが浮ついて、もう作曲どころではない。
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