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「正悟さんの前だとすっごく心臓がドキドキして止まらなくて、息をするのも苦しくて……でも、それなのに」
震えた自分の手をギュッと握りしめ、勇気を振り絞った。
「それなのに、ずっと一緒に居たいって思っちゃうんです!」
震えているのは体じゃなくて、自分の心なのかもしれない。
「教えて……ください。これが、『恋』なんですか? 私は正悟さんが好きなんでしょうか? 間違ってませんか?」
下を向いて目を閉じると、涙がポロポロ落ちてきて。
呼吸が苦しい。
彼の返事が……怖い。
風が涙で濡れた頬を優しくなでていく。
一歩。足音が聞こえて。
また一歩、静かに近づいてくる。
やがてその足音は自分の目の前で止まった。
おそるおそる目を開けると、彼の革靴が見えて。
小さな勇気で顔を上げる。
すると彼は照れ臭そうに微笑みながら、こちらを見下ろしていた。
「……ばか」
という言葉とともに、視界が急に変わって。
全身を包み込む温もりに、また彼に抱きしめられたのだと知った。
「なにその告白」
「っ…」
「照れるし」
「…………」
耳元で囁く彼の言葉がくすぐったくて、息のしかたも忘れるくらい、苦しくなった。
けれど、彼はもう自分を放さない。
これが彼の答えなのだ、と知った時。
涙が溢れ出た。
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