4.恋

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  車が無事にアパートに到着した。 別れは惜しいが、明日ももちろん平日だ。 「遅くまでごめんな。また連絡するよ」 「はい、……それじゃ」 名残惜しくも素直に降りようと、ドアの取っ手に手をかけた時だった。 「!」 右側に影ができたと思ったら、 彼の手が、ドアノブにある自分の手に重なった。 振り向いた先には、至近距離にある彼の顔。 「……」 「……」 見つめあって数秒。 伏せられた彼の目がとらえたのは、 自分の唇。 「……」 思わず目を閉じた。 ちゅっ。 「!?」 おとされた柔らかい感覚は、おでこにだった。 「また今度な」 「……っ」 いたずらを成功させた子どものように、彼がニッと笑うので。 あいた口が塞がらない。 けれどよしよし、と頭を撫でてくれたその手が優しくて、大切にされているのだと思った。 「おやすみなさい」 「おやすみ」 彼の車が見えなくなるまで、ずっとずっと立ち尽くしていた。    
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