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雨が少し弱まったとき、なにか音が聞こえることに気が付いた。
鈴の音…?笛…?
声…?歌っているの…?
車の音が遠退き、静かな雨音のみとなったベランダにかすかに聞こえる音…。
タバコはとうに燃え尽きていて、灰皿がわりの空きビンのなかに落とす。
音の正体を見極めようと思い、耳をすます。
集中しようと深呼吸したとき、かすかな香りに気付いた。
…これは?お香?線香?
なんか、お墓とかで嗅いだことがあるような…?
もっとたしかめようと息を吸い込む。
しかし雨の匂いに遮られ断定には至らなかった。
まあいいや。
もうねなくちゃ。
ベッドに入るころには、再び雨の音が強くなりはじめ、配水管を伝う雨音がまるで楽器を鳴らすかのようだった。
加えて、隣の部屋から笑い声が聞こえた。友人でも来ているのか。
ああ、さっきのも配水管の音だったかな…。
笑い声を無視して、配水管の音に耳を傾けているうちに私は眠りについた。
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