雨音

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次の日、ゆううつながら会社へ向かう。 昨日降った雨で水溜まりができている。 それをうまくかわしながら、道のりを急いだ。 途中、いつものパン屋でランチ用のサンドイッチを購入する。 会計のとき、店主が声をかけてきた。 「おはよう。昨日はせっかくの休みなのに雨でデートに行けなくて残念だったねぇ。あ、彼氏募集中だったっけ?あっはっは。」 「ええ…まあ」 苦笑い。 「もたもたしてると嫁に行きそびれるぞ。あっはっは。」 余計なお世話だ。 しかし「そうですね。」とかわし、何食わぬ顔で店を後にする。 実際、イラっとしたがそんなことよりも就業時間に間に合わせることが最優先だ。 焦って会社へ駆け込むと、15分前だった。 ほっとして荷物を片付け、お手洗いへ向かう。 手を洗っていると、同期の由美が話し掛けてきた。 「ちょっと聞いた!?課長死んだらしいよ!心臓麻痺だって!」 「えっ?そうなの?」 「うん、帰ってお酒を一杯飲んだあとにリビングで、だって。昨日は帰りが遅かったらしくて、奥さん先に寝てたんだって。夜中にガラスの割れる音がしたから見に行ったら課長が倒れてて…ってことらしいよ。」 さすがに驚いた。 昨日まで一緒に働いていたひとが急に亡くなるなんて、あまりいい気はしない。 課長は嫌いだったが、さすがに「いい気味」などとは思わず、冥福を祈った。 その日は、その話題で持ちきりだった。 普段は女子社員の笑い声の響くランチの時間も「死んだ」「急死」「原因不明」などとおよそランチに似合わぬ言葉が飛びかっていた。 「なんかね、倒れてた課長の顔、恐ろしいものでも見たかのような顔だったらしいよ」 「やだ!なにそれ!何を見たっていうのよ!」 どうやら若干ホラーな話を尾ひれにくっつけながら、この話題は回っていっているようだった。 このままだと、ゆくゆくは呪いだとか言いかねないよこのひとたち。 くすっと笑って、残りのサンドイッチをほうばった。
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