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俺は、正直混乱していた。宗教的雰囲気の漂う廃ビルの地下室に叫び狂う友人、それをどうすればよいのだろうか。
「おい!!佐々木!!佐々木!!正気を取り戻せ!!そこには何もいない。」
とりあえず友人の目を覚まさせようと、その肩を揺する。
しかし、効果は無いようだ。
俺の中の感情も、驚きから焦りと不安へ移り変わりつつあった。
「ひっあっ…来るな来るな来るな来るな来るなああ…ぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎっ、あががががががががががががっぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎががががががっ」
突然、佐々木の眼球がぐるりと白目に反転し、ガタガタと彼の体中が痙攣し始めた。
顔面の筋肉は弛緩し唇の端からは唾液が垂れ落ちる。
白目ながらも、どこか笑みを浮かべているようだった。
「ひいいいあっ!!!」
俺は恐怖に後ずさった。友人の哀れな姿に胃の中の汚物が喉元までこみあがる。
「うっ…」
しかし、嘔吐はギリギリ抑えた。
(どうにかしなければ…)
ケータイをポケットから取り出して外部と連絡をとろうとしたが繋がる気配はない。
(くそっ…)
「ぎぎぎぎっ…がががががが…ぎぎ…」
次第に佐々木の痙攣は収まってきた。
その様子を見て俺は少しばかし安心し、佐々木を背負ってビルを出ることを決心する。
そして再び近づいた、その時。
「ぎぎ…ぎ… 」
佐々木は突然沈黙し、白目のまま俺の方を見上げる。痙攣は既に収まっていて、だらりと座っている。
そして、血走った白目と唾液で汚れた唇の両端を引き上げニヤリと笑った。
俺は背筋がゾッとした。こいつは佐々木じゃない…とも思うが凍りついて足が言うことを聞かない。
笑いながら佐々木は告げる。
「オマエラハ
モウ
ニゲラレナイ
ヨ?
ヒ
ヒ
ヒヒ
ヒヒ
ヒヒ」
告げ終わるや否や、そのまま佐々木は床へ倒れこんだ。
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