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俺は、これから目に入るかもしれない物を想像しつつ、ゆっくりと顔を上げる。
二階窓……
三階窓……
四階窓……
五階窓……
その上を見上げると、そこは既に待ち合わせ場所の屋上であった。この廃ビルは五階建てのようだ。
「ふぅ…。」
俺は何も発見出来なかったことに、若干の安心感を得た。一階から五階、どの階の窓にも不審な物は見当たらない。
(しかし、あいつもどうしてこんな薄気味悪い所を待ち合わせ場所なんかに…)
そうこう心の中でボヤキながらも俺は廃ビルの一階のドアノブに手を掛けた。この様なビルの構造上、ドアの向こう側は上へと続く階段だろう。
ガチャン
ドアノブは意外にも簡単に回り少し驚いた。そして俺はドアを開ける。
……
中は真っ暗で何も見えなかった。これでは話にならない。
「ちぇっ。」
俺はもしかしたらと思い自室から持ってきたペンライトをポケットから取り出す。発光ダイオードで電池が長持ちして、かつ、かなり明るいタイプのやつだ。
俺は一回大きく深呼吸して精神を落ち着けた。正直、こんな場所からはさっさと帰りたかったのだが、友人との待ち合わせである以上、帰るわけにはいかない。
パチッ
俺がライトのスイッチを押すと入り口の中一部が白い光で照らされた。見たところ、何か不審な物は何もない。案の定、古ぼけた階段があっただけだ。しかしその階段は上だけでなく階下にも延びている。
「さっさと用事済ましちまって帰ろ。」
俺がそう思って上への階下の一段目に足を掛けたその時。
「ひぃっ。ひあ。た、ママ、助け、あああああああああああああ。」
謎の叫び声が階下から響いた。俺も突然の叫び声に驚き飛び上がった。ゾクゾクする。
(……これは…佐々木の声ッッ?)
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