始動

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――――――――― 4時間前、イタリア。 「お客様、そろそろ閉館の時刻となっております。」 「…………………」 男の返事はない。 中年女性は再び呼び掛けるが、男は全く聞こえていないようだ…。 イタリアのある都市、その中心に位置する教会の左側にぽつんと建っている古びれた図書館。 運悪くこの図書館に夕方まで勤めてる事になってしまった中年女性は、男に声を掛けるのを諦め、別な職員の助けを呼びに行った。 すると、一人の初老の男性が奥から現れ、読書に熱中している男に向かって言った。 「ウィクリフさん……そろそろ閉館しますよ。」 すると今まで耳を貸さなかった男は突然読書を止め、立ち上がった。 「いやぁ…すみません…。もうこんな時間でしたか…。いやはや、借りたい物が沢山ありまして…」 ウィクリフと呼ばれた男は机に並べてあった数十冊の本を腕に抱え、会計の方へ歩き出した。 一番上に乗せてあった本の表紙にはこう書いてある。 「古代宗教の闇と現在、そしてその記述」
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