1人が本棚に入れています
本棚に追加
雨の音が続いていた。
それに重なって断続的に響くのは、虚ろな音色の金属音。
その甲高い音は、木々のまばらな険しい山中の洞穴から聞こえていた。
「いい加減に諦めればいいのに……」
入り口に近い所にある石に腰かけて、持参した焼餅(しゃおぴん)をほおばっていた台零(タイレイ)は、 小さな声で呟いた。
タイレイは血色の良い肌と、まっすぐな紫紺の長い髪が自慢の美しい少女だ。
そんな彼女は、洞穴の奥で丸い大きな石を鎌で切りつけている少年の後ろ姿を、さっきから退屈そうに眺めていた。
「ねぇ英震(エイシン)、ちょっと休んで一緒に食べましょうよ?」
声をかけてみたものの、エイシンはなにも耳に入らない様子で、ただ黙々と動かぬ石を相手に格闘している。
「ここまできたら重症だわ……」
いつも仲良く遊んでいた幼なじみにつれなくされて、タイレイは苛立たしげに足元の小石を蹴飛ばした。
エイシンがこんなばかばかしいことを始めて、かれこれ四ヶ月になる。
なんでも、“仙人"になるためらしい。
最初のコメントを投稿しよう!