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まずい……。
麗と策はそう感じていた。なぜなら、この状況は二人ともマジギレしている状態だからだ。
でも、なんで…?二人には疑問に残った。いつも通りだった。道がボケて、小春が力で突っ込む。それで笑いに変わる。でも…、今回は…笑いに変わらず怒りに変わった。
…、しかし、とりあえず映画は始まった。男性と女性が出会い、恋に落ちる。しかし、女性は先天的な病気を患っていた。
「わたしのことは、忘れて…。」
「嫌だよ。」
「どうして!?わたしは助からないのよ!?」
「結婚してくれ。」
「え…。」
「君が死んでも、僕の心の中で妻でいてくれ…。」
そういって、女性の左手の薬指に指輪をかける。
……物語のクライマックスだ。麗はふと、隣の小春を見た。
「うっ……ひぐっ、えぐっ…。」
泣いていた…。あの、いつも元気で笑顔がまぶしかった小春が…。本当に、泣いていた…。
スタッフロールが流れ、上映が終了した。
四人は外に出た。小春は、まだ泣いていた。
「小春…。」
「おいおい、大丈夫かよ…。」
麗と策が心配する。しかし、道は…。
「へぇ、鬼の目にも涙ってやつか?まさか本当に見られるとは思わなかったな。ははははは!」
そう言った次の瞬間、バチィン!!
小春のビンタが道の頬に炸裂した。
「「「!?」」」
驚く三人。そして、小春は駆け出して行った。
道は、しばらくの間、ぽかーん。としていた。
「なぁ、道…。今回はお前が悪いよ…。」
「……。」
道は…黙っていた。ここで、策は今まできになっていたことを聞いてみることにした。
「なぁ、なんで今まで通りじゃなかったんだ……?」
意味が伝わるには…十分だった…。そのくらいみんなは、長い時間を共有した。
しばらくして、道は答える。
「痛かったんだ。」
「あ?」
「いつもの、小春じゃなかった…。」
「きっと…桜の国だよ。」
麗は言う。
「この…上映が終わったら…行きたかったんだって…。道くんと二人で。」
「…行ってこいよ。道。」
道は、立ち上がって言った。
「ありがとな。策、麗。俺…謝ってくるわ…。」
そう言って道は駆け出して行った。
「小春……、どうしたんだろ…。」
麗と策は分かっていた。道と小春は、ただの親友なんかじゃないってことくらい……。
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