春の風と絶望への一歩

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…桜の国…。桜ノ宮町が何も無い土地に何かしようと企画し、桜が大量に植えられた。その桜たちを見て町長が思わず言葉をこぼした。   「桜の国…。」   それ以来、その桜がある土地は【桜の国】と言われるようになった。 道は駆ける。何度も転びそうになる。でも絶対転ばない。最速で、最短で桜の国に向かう。   『いつもの小春じゃなかった…。』   まるで小春が悪いみたいじゃないか…。何様だよ…。俺は!?道は走りながら自分を責めた。 道は【いつも通り】にできなかった理由がまだあった。道は見えていた。少しだけど…本の少しだけど…。小春が泣いていた…。 違う。俺のせいじゃない。俺のせいじゃない。俺のせいじゃない。小春がいつも通りじゃなかったのが悪いんだ。俺のせいじゃない。だから……。小春にきつくあたったんだ…。 桜が見えてきた。   「桜じゃねぇ。春よ…小春を…見せてくれよ…。」   …ついた…。辺りを見回す。いた。広場のベンチに下向きで座っていた。 道は、小春に近付く。小春は……まだ泣いていた。 なんて言えばいいんだ…?小春の目の前に立ち尽くした…。いつものように下ネタでも言ってれば、また【いつも通り】に戻れるんじゃないか…?それとも、逆ギレして小春が悪い。みたいな雰囲気を作ってしまおうか…?違うだろ。謝りに来たんじゃないか。 そんなことを考えていた。何十分、いや、何時間かたったかも知れない。 なんで俺がこんなに悩まなきゃならないんだ?やっぱり小春が悪いんじゃないか…?そうだ。俺は悪くない。俺は悪くない。俺は悪くない。俺は悪くない。俺は悪くない。オレハワルクナイ。オレハワルクナイ。オレハ。オレハ。オレハ。オレハ。 その時、春の風が吹いた。   『素直に謝ることや…お礼を言うことは…すごく素敵なことなのよ?』   母さんが、いつの日か言ってくれた言葉だ。なんで…今…? 春が教えてくれた…?そんなことはありえないけど…。そんな気がした…。悪いな。春。礼を言いてぇけど、一番先に謝らなきゃならないやつが目の前にいるんだ…。 よし!言うぞ!   「「ごめんなさい!!」」   え…?重なった。二人は目を合わせる。   「ぷ」   「くくっ」   「「あははははは!」」   春には、どうやら辛いことを笑いに変えてくれる力があるみたいだ…。
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