月出る国

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 とある七月の暑い日。  雲一つ無い快晴のもと、とある学校では五時限目の授業が行われていた。 「……であるからしてこうで……」  教師が黒板に図を描きながら説明している中で、生徒たちは退屈そうに授業を受けている。 「こら、羽川に長田。喋っていないで授業を聞け。甘利。関係無いページを見るな。龍津。昼食後なのはわかるけど授業中は寝るな」 「あ、はーい」  四人はやる気のない返事をした。  ここで、この物語の主人公たちを紹介しておこう。  羽川政哉は、体操部の人である。彼は背が小さいこともあって猿並みの跳躍力を持ち、五メートルぐらいなら軽々とジャンプできる。さらに、彼はどこか人を引きつける魅力があり、そのため女子にモテるし、友達も多い。また、お洒落に目がないのもその一因だろう。  長田義樹は、剣道部の人である。かれの打つ剣は目に見えない程強い。また、とにかく曲がったことが嫌いで、喧嘩っ早い。  甘利元司は、パソコン部である。彼の家は研究所なので機械技術に強く、彼のパソコンには世界の全てが記載されていると言われる。また彼は小石を銃弾のように投げることができる。  龍津昌介は柔道部の人である。身長は小さく太っているが凄まじい怪力の持ち主で、大岩でも軽々と運べるだろう。その一方で友達を思う心は誰よりも強い。ちなみに、友達からは社長、と呼ばれている。  彼らは、中学からの同級生であった。そして、いずれも常人を超越した能力を持ちながらもそれを活用出来ない少年たちであった。 「……それにしても今日は暑いな」 「ああ。こんな時は何か涼しくなるようなことをしたいよな……てコラ四川! シャツはズボンに入れろ!」  義樹が近くにいた四川に向かって怒鳴る。 「はあ? なんでそんなことしなきゃな……」 「いいから入れろってんだゴルァ!」 「は……はいぃぃぃ! すいません!」 「なんか義樹の声って有無を言わさない迫力があるよね」 「まあ、風紀委員だからな」 「『自称』風紀委員だけどね(べキッ)」 「あっ……あのさっ肝試しなんてどうかな?」  政哉が話を戻す。 「それなら絶空洞がいいよね」  絶空洞とは四人の家の近くにある洞窟のことである。 「それじゃ八時に洞窟の前集合ね」
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