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数日がたち、トシヤは仕事帰りに同僚とバーで飲んでいた。突然携帯が鳴り、トシヤは席をたち電話にでた。
「もしもし、藤川です。」
「もしもし、私。」
電話の相手は聞き慣れた女性の声だった。トシヤは相手がユイだと気付いた。ユイは、なにくわね感じで続ける。
「トシヤの部屋においてある荷物、今から取りに行きたいんだけど?」
トシヤは、切なくなった。ユイはもう自分のことを想っていない。治りかけていた心の傷がまた開いた。トシヤはそのことを隠すように返した。
「わかった。20分くらいで家に戻るよ。」
ユイは、
「じゃあ、後でね!」
とすぐに電話をきった。トシヤは、同僚に用事ができたことを伝え、店を出た。店の前の通りでタクシーをひろい、帰路についた。トシヤはやるせなさを感じながら、ユイのことを考えていた。ユイと別れてからずっと付きまとっていた、[逢いたい]という感情が溢れてきた。トシヤはユイに、やり直したいことを伝えようと心に決めた。このまま別れては、後悔することをわかっていた。自分がもう少し素直になれば、別れることがなかったことも。トシヤは家につき、部屋の灯りをつけた。すぐさま部屋のベルが鳴った。
「ピロピロピロ」
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