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第3章…宝獣将
「来い。ワユ。」
柄をしっかり握りしめ、地面を蹴った。ワユはセツナの背後に周り込み切りかかる。が、セツナは後ろに振り向かず腕と剣を背後にやり簡単に受け止めた。受け止めてすぐ振り返り切り返した。ワユは後ろに跳躍しその一撃を交わした。足をつき、体勢をたてなおし今度は正面から連続できりかかる。ワユの剣は普通の人間には複数に見えるほどの速さだが、セツナの剣もそれらを全て受け止める。が、この襲撃は背後をとるためのものだった。ワユは瞬時に後ろに周り剣を一閃させる。しかし、
「!!」
瞬きをしたわけではない。でもセツナはワユの視界から消えた。
「ここまでだ。」
ワユの背後から首に剣をあてセツナはそう言った。
(あの時と同じだ。セツナさんが消えた。)あまりの出来事に驚きを隠せない。
短い静寂が入った。
「ふぅ~。」
セツナが剣を鞘に戻すと緊張の糸が切れどっと汗が出た。
「セツナ。少しやり過ぎじゃない?」
「いや。これくらいがちょうどいい。」
「で、どうなの?」
「いいんじゃないか?合格だ、ワユ。」
「え?あたし負けたけどいいの?」
「いいのよワユさん。セツナは宝獣将なんだから勝てるはずがないの。」
「宝獣将ってそんなにすごいの?」
「宝獣将を知らないの?」
「ミトラ。ワユは異界人だ。」
「あ~なるほど…!異界人?それを先に言いなさいよ!」
「悪いな。」
「も~。ワユさん、宝獣将っていうのはその国で一番強い人間への称号なの。」
「へぇ~セツナさん、一番強いんだ!」
「そう。セツナ、これから王城に行くんでしょ。」
「あぁ。」
「ちょうど良かった。セツナが出かけてる間に手紙が来て、国王があなたに依頼を受けて欲しいんですって。」
「そうか。わかった。ワユ、今から王城に行くぞ。」
「私も?」
「異界人を見つけたら王城に連れて行かなければいけないんだ。」
「そうなの?うん、わかった。」
「セツナ。」
「ん?」
「気をつけてよ。最近全国の宝獣将が王城に戻ってきてるらしいの。」
「何か起こりそうだな。とりあえず行ってくる。」
「行ってらっしゃい。あ、忘れてた。ワユさんこれを。」
「?ミトラさん。これは?」
ミトラが渡したのは紅い石が埋め込まれた腕輪だった。
「この腕輪はコルニクス傭兵団の団員証よ。」
「ありがとうございます。じゃ、また後で。」
「行ってらっしゃい、ワユさん。」
そうして二人は王城に向かった。
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