†三月の章†

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「で、ヘアスタイルどーすんの?」  口の悪い店長が再び鏡ごしで向かい合った俺に聞いて……っておい! アンタが“決めてやるから”って言ったんだろ?  と、言いたいところだが、ここは穏便に。 「お、お任せします」 「あっそ。んじゃあ、まずはそのガシガシになった髪を切ってからシャンプーとトリストーンしよっか」 「は? トリ、トリストーンて?」  知らない俺が悪いのか? それとも質問ばかりしてる俺が悪いのか?  ただでさえ面倒臭さたっぷりの表情をしていた店長が、更に肩を落として露骨にうんざりする。  夢で何度も見た美容室は、こんな店だったか?  俺の中で不安が込み上げる。 「誕生石を粉末にして成分量を多く入れたトリートメントだよっ。もちろんアンタのねっ」  へえ、なるほど。しかしそんなのが髪にいいのか? いや、もうこれ以上聞くのは止めておこう。こっちも面倒だ。 「しっかし……アンタ、昔っから顔に出るクセ変わんないねぇ。ほら、燕が案内するから先にウェットしてもらいな」  え? 昔から?  じ、じゃあもしかして、やっぱりこの最低な女店長が……?  そんな疑問符を頭の上に掲げながらも、俺は燕さんに導かれながらシャンプー台の椅子に腰を降ろす。  彼女はにっこりと極上の笑みを浮かべながら言った。 「じゃ、倒しますねー」 「ぐふっ!!」  突然の事だった。  腹部への強い殴打。笑顔を崩さず彼女の拳が飛んできたが何て力なんだ!? いやそれ以前に「倒す」の意味が違うだろっ!? 「はい、頭上げてくださーい」  当然腹に食らったら衝撃で俯いていた俺の額に第二の衝撃!  ガンッという音と共に後頭部の激しい痛みっ。  い、一体何が起きた!? 俺は何をされるんだっ!?  そう思ったのが最後の意識。  天井を仰ぐ視界には、もはやフェードアウトしていくオレンジ色のライトだけが俺を支配していた。  
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