青春の突っ走り方

4/21
前へ
/22ページ
次へ
     清水はそれを見て一瞬顔をしかめると、こちらを向いて怪訝そうな表情で尋ねてきた。     「健太バスケ部辞めるの?」     「……いや、正直迷ってる」      それは本心からの答えだった。      さっき帰ろうとしたのだって、ようは問題の先送りだ。辞めるという意思表示ではない。     「退部届けをわざわざ先生からもらったのに迷ってるの?」     「まあ……」      部活を続けたいという思いはあるが、これ以上続けても無意味だと理性がささやくのだ。      そんな俺の葛藤を知ってか知らずか、清水は笑いながらも目の奥に真剣な光をたたえて言った。     「あたしはね、続けたほうがいいと思うよ。ほら、よく言うじゃん、『損得感情を抜きにして突っ走ることが出来るのは高校生までだ』って。青春は周りを見ないで突っ走るべきだよ」      ……清水の言いたいことはわかる。俺だって出来るならそうしたい。      ――でもさ。     「それって、青春を突っ走らなかったやつが言っていいセリフじゃないだろ」      その返しに、清水はなぜか小さく微笑んだ。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加