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清水はそれを見て一瞬顔をしかめると、こちらを向いて怪訝そうな表情で尋ねてきた。
「健太バスケ部辞めるの?」
「……いや、正直迷ってる」
それは本心からの答えだった。
さっき帰ろうとしたのだって、ようは問題の先送りだ。辞めるという意思表示ではない。
「退部届けをわざわざ先生からもらったのに迷ってるの?」
「まあ……」
部活を続けたいという思いはあるが、これ以上続けても無意味だと理性がささやくのだ。
そんな俺の葛藤を知ってか知らずか、清水は笑いながらも目の奥に真剣な光をたたえて言った。
「あたしはね、続けたほうがいいと思うよ。ほら、よく言うじゃん、『損得感情を抜きにして突っ走ることが出来るのは高校生までだ』って。青春は周りを見ないで突っ走るべきだよ」
……清水の言いたいことはわかる。俺だって出来るならそうしたい。
――でもさ。
「それって、青春を突っ走らなかったやつが言っていいセリフじゃないだろ」
その返しに、清水はなぜか小さく微笑んだ。
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