アサミ

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時計を見ながら走ったがそれでも時間に余裕があったために仙台市内を観光して時間を潰した フェリーターミナルに着き、乗船手続きを済ませてバイク乗り入れると見覚えのある千葉ナンバーのバイクがあった ヒップタッチをした彼女のバイクだ 方向と装備で予想はしていたものの同じ船とわかり少しバツが悪くなっていた 雑魚寝の4等船室に行くとそこには既に大勢のミツバチ族のライダー達が輪になって座り、バイク談議に花を咲かせていた 周りを見ても彼女とおぼしき女性は見当たらなかった 出航してすぐ道内マップを広げると声を掛けられた 『初めて?』 顔を上げると声の主は輪になっていたライダーの1人だった 『いや、3度目っすよ』 『良かったらこっちに来て一緒にどう?』 言ってビールを掲げた 『はぁ』 あまり気乗りはしなかったが輪に加わった 『とりあえず自己紹介して』 声を掛けてきたライダーが輪の中での年かさらしい その仕切りに少々違和感を覚えて中身の無いくだらない自慢話に辟易して早々にその場から離れてデッキに出た 真っ黒な海面を進むフェリーのデッキは真夏とは言え肌寒く1人を除いて人影は見えなかった
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