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* * *
「全部……誤解だったのか?」
呆然とする父親にルエルは申し訳無さそうに頷く。その隣では涙を拭う母親の姿がある。
「強盗なんか入ってないし、襲われてもいないの!」
「え、じゃあ……こんな時に誰もいない家が嫌になって飛び出したってのは……?」
「何それ?買い出しに行ってただけだよ」
お互いの誤解が解けるのに数分の時がたち、脱力したようにソファーに体を預けている。“ごめんなさい”と謝罪するのがやっとで、申し訳なくて顔を上げられなかった。
「ヴィオラ、冗談にしては悪ふざけが過ぎるわ!どうしてこんな嘘を……」
「お前達は甘え過ぎだ。
そりゃあ12歳にもなれば身の周りの事位出来る。食材さえありゃ食いつなぐ事も出来る。
でもな、だからって寂しくないわけねーだろ。そんな事に言われるまで気付かない方が悪い」
ヴィオラはしれっと言って退け、優雅な仕草で紅茶を口にする。
「それに飛び出してはいないが、ルエルの言ってた事は本当だ。
家は家族が集まる場所なのに、どうしてバラバラなの?
顔や声を完全に忘れたらどうしようって」
「お師匠様……あたしの為に?」
驚いて目を見開くルエルに、ヴィオラはぽんぽんと頭に触れる。
「仕事に口を挟むつもりはねぇけど、昨日伝えてすぐ飛んで来れるなら……ちょっと会話する時間位作ってやれよ」
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