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「ん……」
机に伏していた人がわずかにピクリと反応する。水色の柔らかな巻き毛が揺れ、何度か瞬きを繰り返す。
「んー……」
そのままゆっくりと体を起こし、まだ重い瞼を擦りながら状況を確認する。
開いたままの洋紙には、ミミズが這っているような線が書かれていた。
ルエルは猫のようにしなやかに体を伸ばす。
「んー……駄目だ。何の勉強してたか全く記憶に無い」
ルエルは洋紙を丸めてゴミ箱に捨てる。
勉強と言ってもルエルは学生では無い。
ヒトの言葉が通じない独自の言語を持つ種族達と円滑にコミュニケーションをとる――それがルエルが職業としている通訳の仕事だ。
言葉さえ通じれば力仕事を手伝ってくれたり、珍しい鉱石の場所を教えてくれたりする。
その為、種族ごとの習性・生態も理解しておく必要がある。
いろんな種族の人とお茶会を楽しみたい。その夢の為にルエルは日々勉強している。
――もっとも、気が向いた時しか仕事は引き受けないのだが。
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