Dear

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「あれ?確か資料がこの辺に…………あー……」 机の周りは資料や洋紙が散乱している。眠った時に腕を伸ばしたせいで積み上げていたモノが落ちてしまっていた。 ルエルは溜め息をしつつ資料を片付けていく。 「うわっ、洋紙の順番がメチャクチャ。並べ直し……あ!」 分厚い本の下敷きになっていた正方形の小さなメモ。破れないように慎重に取り出し、軽く埃を払う。 メモには“体調崩すなよ。いってきます”と短い言葉が綴られている。 「肝心の帰って来る日が分かんないって。まぁ、二行になっただけ進歩だけど」 くすっと笑みをもらしルエルは立ち上がる。未だ整理されていない本を跨いで、ベッドの近くにある棚へと近寄る。 棚の上には飾り気の無いシンプルな写真立てが二つ。そのうちの白色の写真立てを手に取る。 「結局こんな写真しか撮れなかったんだっけ」 写真にはルエルを含め四人の人が写っている。楽しそうな笑顔の中、一人だけが狼狽えたような顔の男性。 「由梨が来る前だから……10年前になるのか」
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