世界にただ一人だけの人間

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 獣人達と俺の不思議な集団は、ただひたすらに足を進めている。少しずつ辺りの緑は薄れ、踏みしめる度に土埃が舞う。 「……どこに向かっているんだ?」  連れられてきた時のショックもいつの間にか薄れ、俺の頭は冷静さを取り戻していた。  チラチラと辺りを観察しつつ、俺はぼそりとサキに質問する。 「私達の仮住まいです。本当はケイ様をお連れしたら、すぐに仮住まいに向かう予定でしたが……少々手間取ってしまったので急いでおります。」 「すぐにって……急がなくちゃいけない理由があるのかよ?」 「トラベルリングを使用しましたから、もしかしたら誰かが嗅ぎ付けてくる可能性があります。」  トラベルリングとは何だろう、と一瞬首を捻る。が、多分その安直な名前から、俺がこちらに連れてこられる時に嵌められた腕輪の事だろうと見当がついた。  俺は思わず、左腕に嵌められた腕輪を眺める。サキの右腕にも嵌められているそれは、無骨な姿からは想像がつかない程に軽く、そして俺にはこの世界の存在許可書のように感じられた。
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