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慌てて目をこする。しかし、次に目を開けても少女はそこに居た。
穴が開くほと少女を眺めていると、不意に少女と目が合った。深い黒の瞳が、俺を真っ直ぐに捉える。
その瞬間だった。少女がハッとした表情に変わると、脇目もふらずに走り出したのだ。
他の通行人をすり抜けて。
「やっぱり……!?」
実体が無いかのごとく、少女はすり抜ける。裸足で地を蹴り、一直線に走る。
まるで俺から逃げるように。
それを追い、俺も走る。人並みをかき分け、少女の背中を追って走る。
「ちょ……何で逃げるんだよ!」
大通りから路地へ、アスファルトで舗装された道を少女はただひたすら走る。それを追う俺。
突然の鬼ごっこだったが、意外にも早くに終わりが来た。何回が路地を曲がった先の公園に、少女が飛び込んでいった。
続いて飛び込んだ俺であったが、少女はもう逃げてはいなかった。
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