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「人間不信、か……」
お鈴と別れた久坂は廊下を歩きながら一人呟く。
里桜の場合は父親からの虐待。
久坂の場合は女への嫌悪。
人間不信になったきっかけは違えど里桜はどこか自分に似ている、と久坂は感じていた。
常に異性との間に壁をつくっている自分と。
自分に媚びないばかりか逃げるように去られたのは久坂も初めての経験。
『私たちと話す時は明るうて人当たりの良いえぇ子なんどすけどね。里桜はどうも男性と話すのが苦手で調理と食事の運搬のみをやらせていたんどす。非礼があったかもしれまへんが何卒お許しを』
お鈴の弁解を聞いてもなお、久坂は自尊心を傷つけられた気分だった。
だが、同時になかなか面白い女を見つけた、と気分が高揚する。
「ふっ……。何日で落とせるか遊んでみるのも悪くない」
歪んだ好奇心を胸に久坂は一人ほくそ笑んだのであった。
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