だから俺は孤独を望む

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情事後、浅い眠りについた久坂はいつになくうなされていた。 彼の脳が彼にとって一番の悪夢を見せているからである。 瞼の奥には凄惨な光景が広がっていた。 血溜まりの中には処刑された尊敬する師の首が浮かぶ。 武士として切腹することさえも許されず、あくまで“罪人”として斬首に処された。 死に目には会ってないというのに何故だか鮮明に脳裏に浮かぶ師の最期。 江戸幕府の安政の大獄によって約束も絆も師弟関係もあっさりと断ち切られ、全てが夢幻のように現実味のないものになってしまった。 夢の中で師は振り返り、柔らかな笑顔を見せ、手を差し伸べる。 『さぁ、今日も一緒に勉強しましょう』 夢の中の彼は手を伸ばせば届きそうな距離にいるのにいつもあと一歩及ばない。 そしてすぐに泡のように消えてしまう。 「松陰先生っ……」 久坂の口から苦しげに師の名が発せられた。 と同時に彼は自身の声で目を覚ます。 空を切った天井に伸びた右手。 師が処刑されたという現実を右手に握りしめるとそれを力無く地面に落とした。
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