だから俺は孤独を望む

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久坂はおもむろに瞳を閉じたかと思うとかっと目を見開き、起き上がった。 隣で寝ている女を一瞥(いちべつ)すると布団から抜け出し、薄手の着物の袖を通す。 髪を結い、着物を正して大小を腰に下げると久坂は立ち上がり、女に何を言うでもなく部屋を退出しようとした。 が―― 「久坂はん……」 自分を呼ぶ女の声にふと足を止めて彼女を見やる。 「起こしてしまいましたね。すまないことをしました」 内心、苦々しげに舌打ちしているのだが、表面上はあくまで顔良し、性格良しの人間を装って目を伏せる。 「えぇの。それよりまた来てくれはる?」 「……えぇ、もちろんですよ」 ほんの一瞬、顔を顰めた久坂。 が、女の望む言葉をかけてやると彼女はすぐに笑顔になる。 (なんて単純……) だが、久坂にはもうここに来る気はさらさらなかった。 彼は束縛されることを嫌うから。 女とはたまに会い、体の関係を持てたらそれでいいという考えがいつも頭の片隅にあった。 女の頬に手を滑らせ、触れるだけの口付けを交わしてやると久坂は改めて遊郭を後にした。 (俺は師の仇を討つためだけに今を生きている) 復讐という生き甲斐を改めて自分の胸に刻み込んで。
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