巡り逢い

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一瞬呆気に取られた。 少女の謝罪はあまりに潔く、久坂に文句を言わせないほどの速さだったのだから。 拍子抜けした彼はガシガシと頭を掻く。 「構いませんよ。顔を上げなさい」 久坂自身、そのような言葉をかけたことに心底驚いていた。 続けざまに驚愕が彼に襲いかかる。 (……綺麗だ) 少女は今まで数え切れないほどの女と関わってきた久坂でさえもたじろぐほどの美しさであった。 背中辺りで束ねられた艶(つや)やかな黒髪は上物の絹にも見える。 こぼれ落ちそうなほどに大きな瞳は黒真珠のよう。 小さいながらも鼻筋は通っている。 熟れた林檎を思わせる可愛らしい唇。 それら全てが白磁の如し肌に完璧な配置で位置している。 童顔で尚且つ自分の胸ほどまでの背丈の少女に久坂は不覚にも頬を染めた。 「替えの着物は後で部屋の方にお持ちいたします。この場も片付けておくさかいに先に部屋へお戻りおくれやす……」 少女が慌ててそう言った頃にはすでに久坂はしゃがみこんで割れた食器類を盆にまとめていた。
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